スタッフ日記
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ドクター・エンジェル
2007年7月23日   文 : 砂田麻美
写真 : 飯塚美穂
東京都・三鷹市に実在する永井医院での撮影が始まり、3日目。
原田芳雄さん演じる元開業医の父・恭平と、
その跡を継がなかった只今失業中の息子・良多の、
ぎこちない会話シーンの撮影。

撮影中、ほぼ自室に監禁状態(ほんとうに頭が下がる!)
の永井先生が撮影の様子を見に縁側に出ていらした。
初対面の私は、ご挨拶を兼ねて先生に話しかけてみる。
既に亡くなった私の祖父も小さな田舎町で医者を営んでいた事、
一人息子である私の父は、この物語の良多と同じく医者を継がなかった事。
永井先生にとってはあかの他人の、正直どうでもいい話。
でも何故か、この映画には登場人物達に自分の家族を投影してしまうことが
私のみならず他のスタッフにもあるようだ。
そしてその事を、又別の誰かに話したくなる。
「この映画は、自分の家族の物語なんだ」と語らんばかりの勢いで。
私はこの現象をひそかに「歩いても現象」と呼んでいる。

話を聞いていた永井先生は、一つ一つ笑顔でうなずきながら、
最後に「ほーう、そうですか」と静かに笑った。
永井先生の顔は、天使みたいだなぁと思う。
すると横に居た是枝監督が、縁側に座る先生を正面からカメラで撮影していた。
監督も、先生を天使みたいだと思ったのだろうか?


 

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