是枝監督は、その日撮影した分は必ずその日のうちに編集する。
翌日の放送を控えている訳でもないのに、だ。
撮影が深夜に及ぼうと、炎天下ロケで汗だくになろうと、“かならず”だ。
そうする事で、足りないカットはないか、シーンの意図はブレていないか、
最終確認をしながら撮影をすすめていくことが出来るんだそうだ。
すべての映画監督がこうやって日々編集をする訳ではないから、
これは、是枝監督の映画作りの特徴ともいえる。
今日の編集中、ふと監督に尋ねてみた。
「父親と息子の関係って、そんなに関係性に距離が生まれるもんなんですかね?」
『歩いても歩いても』に登場する、原田芳雄さん演じる父・恭平と
阿部寛さん演じる息子・良多の関係性が、
母と娘のそれとは比べ物にならない程距離を感じたからだった。
是枝監督は、「そう」と即答。
「息子は、どこか父親を超えなきゃいけない気持ちがある。
娘と母親って、子供を産んだり色々な局面で関係性を修復できるチャンスがあるけれど、
息子と父親って、いざ取り戻したいと思った時にはもう遅いんだ」
是枝監督は、今回の映画は今までになく私的な要素をはらんだ映画だと言う。
本日の編集終わり、いつも冷静な眼差しで大人達を観察している良多の息子、
10歳になる「あつし」が画面に表れると、
「これは、大人な子供と子供な大人の映画なんだ」
と監督が静かに言った。 |