スタッフ日記
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若き日のカントク
2007年8月16日   文 : 砂田麻美
写真 : 飯塚美穂

体がキツい。
慣れない現場での緊張からなのか、
家に帰るともうシャワーを浴びる以外の気力が残っていない。
映像業界で働きながら「体力がない」とは、料理に携わるものが
「僕ってば味音痴で・・・」というぐらい見当ちがいな状況をさす。
だからいつもその事は黙っている。黙ってはいるが、体は正直なので
毎日顔を合わせていれば私が日々消耗していることは一目瞭然らしく、
ついに製作担当の三辺さんから
「砂田、お前死体に似てる」
と忌憚ないお言葉をいただいた。
おまけに仕事の一部である映像ケーブルの処理にもなかなか慣れない。

撮影部の助手さんに、私のこの人言えぬ心のしこりを吐露してみようかと
出来るだけ無邪気に話題をふってみたところ、
「自分、この前の作品が雪山ロケだったんで、今回はもう幼稚園みたいっス!」
と言われ増々心が固くなる。

あの人が駄目ならこの方はどうだろうかと、
今日帰りのタクシーの中で是枝監督にそれとなく若かりし日の事を尋ねてみた。
すると、「それはそれは酷かった・・・」と期待値の高まる答えが。
どのように酷かったのか、ディテールを執拗に尋ねる私。
「存在を否定されるほど、使えない人間だった・・・」と流れゆく夜空を見上げる監督。
それを聞いて、当時の是枝監督とガチンコで語りあいたいと、強く思った。


 

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