私の仕事は、「ビジコン担当」と言われる。
撮影カメラとチェック用のモニター・通称「ビジコン」を撮影スタッフが接続し、
映像が正常にビジコンに映し出されると
私が彼らに「ビジコン入りました！」と大声で叫ぶのが習わしである。
ところが今日、この「ビジコン入りました！」の声にクレームが入った。
撮影現場にいらしていた本映画の企画を担当された安田さんが、
「砂田の言い方はなんだか怒っているみたいだな・・・」とつぶやいたのだ。
要は、私の口調が「こっちはずーっとモニターに画が映るの待ってんのにさぁ、
チンタラやってんじゃないわよ撮影部！はい、やっと映った。ビジコン入りましたぁ！！」
といった感じに聞こえるらしい。
逆の状況はあっても、立場上私が撮影部を怒るにはどうやったってならない訳で、
あの手この手で否定してみたのだが、「いいや、怒っている」と言ったきり安田さんは納得しない。
「ビジコン入りました！」の声が感じ悪いという理由で是枝組を解雇されるのも痛すぎるので、
なんとかしなくてはならないと思った。
そして、昔GAPでアルバイトをしていた時にお客様に向かって「こんにちは！」と
明るく連呼していたイメージで、心機一転チャレンジしてみることにした。
すると、チーフ助監督の兼重さんが「いいよ？スナッチ。その声だ！」と大げさに褒めてくれる。
気を抜くとまた怒っていると言われてしまうので、この日は「ビジコン入りました！」の前に
幾度となくイメトレを行い、その瞬間に備えた。
その後安田さんからのおとがめはなかったので、気に入ってもらえたのだろうか？
いずれにせよ、なんとか解雇は免れたようだ。 |
