2005年4月6日
昨年の夏からスタートしていた久々のテレビ番組が完成しました。6人のディレクターによる憲法をテーマにしたシリーズ企画。僕は9条<戦争放棄>をテーマに、制作しました。 タイトルは「忘却」。放送は5月3日の深夜です。憲法そのものについてのドキュメンタリーというよりは、憲法を題材に、自分史の中に意識され、また忘却されてきた「権力」「暴力」「加害性」といったものを再検討してみる----そんな番組です。 残念ながら、6人のディレクターの1人だった森達也さんの1条(天皇制)は今回のシリーズ企画としては成立せず、全5回の放送ということになってしまいました。僕の番組も様々な事情によって、当初の放送予定から3ヶ月近く遅れることになりました。この間の事情については又、どこかでお話することもあるかも知れませんが、ひとまずは納得した形でフジテレビには納品を済ませ、あとは放送を待つばかり、という状況までこぎつけました。楽しく又、タフな作業でした。 教育現場での「日の丸・君が代」強制を取材したNHKのクローズアップ現代の番組内容に対し、自民党や都の教育委員会から抗議の声があがっているようです。教科書検定に合格するために、社会科の教科書の記述から自主的に「慰安婦」についての内容が消えたようです。検閲なのか自主規制なのか、いずれにしろ、このような圧力に対抗する為にメディアやジャーナリズムの存在はあるはずですし、「学校」という場が「国家」の価値観の完全な支配下に置かれるのならば(そのことに現場の教師達は公務員であるからこそ、自らの存在をかけて戦ってほしいと思いますが)、「日本」や「日本人」というワク組みにとらわれずに「学ぶ場」というものを「思考する時間」を僕たちが生活する場の中にどうにかして作り出さなくてはいけないと思っています。 その為に僕に何が出来るのか・・・ その為にテレビは何が出来るのか・・・ これからも考えていきますし、その1つの試みとして今回のNONFIX「忘却」はあります。ゴールデンウィーク真っ只中の深夜ですが、是非ご覧ください。 是枝裕和
P.S. 次回のメッセージでは新作の映画「花よりもなほ」についての制作経過報告をしますので、こちらもお楽しみに。 |
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