いやぁ、御無沙汰していたのには理由がありまして…
「空気人形」の仕上げの作業を急ピッチで終えまして、5月の12日から18日までカンヌの映画祭に参加して来たわけです。
滞在は短かったんですが、充実した日々で…
まぁ、僕も、ぺ・ドゥナさんも板尾さんもARATAくんも、ほとんど取材を受けているだけで終わってしまったというのが現実なんですが、8年前にARATAくんと「Distance」という映画で来た時には、コンペだったのに、何故か(笑)あまり取材が入らずに、カンヌの海辺の砂浜でARATAくんと伊勢谷くんと浅野忠信くんと相撲をとったり、ムジャンという隣町まで遠出をして山の上のレストランで美味しい生ハムメロン食べたりしたんですが…今回はそんな時間もなく、嬉しいやらちょっぴり寂しいやらでした。
そうそう、ランチで入った海辺のレストランでトニー・レオン!を見掛けてごあいさつしたり、パク・チャヌクの新作に主演しているソン・ガンホさんと立ち話をしたり、わざわざ公式上映に足を運んでくれたジュリエット・ビノシュさんとランチでご一緒したりと…そんなステキな時間もあったのでした。
海外の映画祭へ出品して、あわよくば賞にでもからんで、凱旋興行を盛り上げて――といった(内向きな)色気も、もちろん無いわけじゃないんですよ、正直な話。
ただですねぇ…もう15年くらい、数えると延べ50くらいの映画祭を訪れまして。
この5年は、ほとんど、その国に配給権を売って、公開のキャンペーンを兼ねて訪れて、映画祭の上映をプレミアにして、その国の興行へつなげていく――という(外向きの)ビジネス展開の流れの中での映画祭への参加というのが定着しているわけです。本来的にはですよ、一般公開されない映画を映画祭で、というのが観る側のスタンスとしては正しいというか、本筋だろうとは思うんですが、なかなか作る方としてはそうも言っていられない現実があるわけですね。
僕の映画の場合、まだまだ海外の興行がメインになる段階ではなく、国内興行が最重要なのはもちろんなのですが、それでも「歩いても 歩いても」などはフランスでは公開数週で、プリント数が60を越え、10万人を越える動員を記録しているわけで(驚くでしょ)単純に、観た人間の数だけを比べると、日本国内の全国合計よりもフランス一国の方が多くなりそうな勢いです。
今週韓国の公開も始まり(ソウル6館。東京は5館でした)8月にはニューヨークでの一般公開も始まります。収入比でいうと、現段階では国内3、海外1くらいの割合でしょうか。これを大きいと考えるのか、小さいと考えるのか…。
問題はですねぇ…この海外の人数が直接的な収入増にはなかなか結びつかないところなんですね。このあたりの問題点はいずれ又チャンスがあれば書きます。
さてさて。そんなわけで「空気人形」。
実はカンヌから戻りまして、再編集をしておりました。
ワールドセールスのエージェントから、「もう少し短い海外版が作れないかなぁ…お金出すから」とひかえめな提案をいただいて、「え―― やってみるけど、無理だと思うよ。」と、半ばふてくされながら取り組んでみたら、思いのほか気持ちよく、シェイプアップ出来てしまいまして、どうせなら国内の公開もこちらで、ということになった次第です。
カンヌ映画祭でワールドプレミアをして、結果的に言うと、それは<未完成版>ということになってしまったわけで…ぜいたくな、というか何というか… ちょっと素人のようなことになってしまったのですが、(結果的により良いものになったんですから)という周囲の暖かな眼差し(一部、あきらめ)に支えられながら、ようやく今週18日に、本当の完成披露試写会を迎えます。
みなさまの眼に触れるのは、もう少し先になるかと思いますので、お待ちください。それでは、また。 |