突然の訃報に接し、驚きと哀しみに包まれています。
昨年の秋、ドラマの撮影現場で一度体調を崩されたことがあり、その時に病状はお聞きしていました。
しかし『芝居がやりにくくなると申し訳ないので、共演者のみなさんにも内緒にしてほしい』とご本人から告げられ、本当の病状は伏せたまま撮影は再開、続行いたしました。
(息子役の阿部寛さんはご存知だったようです)
ドラマの最終回は夏八木さん演じる父親のお葬式のシーンが中心でした。
脚本通りに撮ることをためらっていた僕の迷いを見透かすように、夏八木さんは『良い予行演習になるから』と明るく笑い、画面には直接映らない棺の中のシーンもご自身で演じられました。
そんな体調にもかかわらず、撮影現場ではスタッフ、共演者、見守るご家族のすべてにいつもと変わらぬ気を配り、優しい言葉をかけてらっしゃいました。その姿がとても印象に残っています。
今年1月、渋谷でお食事をご一緒したのが、お会いした最後です。
「撮影の途中で倒れてしまい、ご迷惑をおかけしました」と深々と頭を下げられたその姿に、プロの役者としての厳しい覚悟を感じました。
その時は撮影時よりはずっとお元気そうに見えましたし、次回作の映画のことなど楽しそうに話されていたので、今回の早過ぎる訃報は、とても残念でなりません。役者夏八木勲の最後の作品に関われたことを映像に関わる人間のひとりとして、心から誇りに思います。
ご冥福をお祈り申し上げます。 |