ワンダフルライフ ティーチイン
 
AFTERLIFEの五人
 

男性 : 「死んでから来る」っていうのは、死んでからすぐ来るんでしょうか、それとも死んでから何日か経ってから…


是枝 :
なんの説明もしてないんですけど、死んでからすぐ来ると思ってました僕は。それであそこにいる7日間ていうのは、初七日っていうイメージだったんですよ。


男性 :
じゃあ、誰も死んでしまったことにとまどったりせずに、みんな落ちついちゃってるのは、何かそういうイメージが監督の中にある?


是枝 :
普通考えると、死者の人達っていうのは、死んだことが受け入れられなくて…っていうようなリアクションがあった方がいいのかなって思ったこともあるんだけど。
「天国もの」っていわれる映画なんかは、あの入り口でじたばたして、もう一遍生きる側に戻ったり、幽霊になって地上に戻って昔の恋人に会ったりとか、そういうところでドラマを作っていく形がけっこう多いじゃないですか。そっちの方向に観てる人の感情を押したくなかったんで、まず亡くなったという前提を受け入れた上での話にしたかったの。 それでそういう登場人物を出すことにした。

…質問がすごく難しくてね、いま。答えるのに苦しんでるんですけど。




女性 :
最後に天窓から見える月が作り物だってわかるんですが、あれは記憶が作り物だってことをいいたいんでしょうか?


是枝 : はい。(客席爆笑)そういうことが言いたかったっていうふうに、スタッフの方たちには説明しました。
が、それももちろんあるんですけど、あの天窓から誰かが覗くっていうシーンが作りたくて。あのー、もちろんこっち(記憶が作り物云々)の方が最初なんですけども。

ロケハンに行ったときにあの天窓があって、そこからすごくきれいに青空がのぞいてたんですよ。これは何か天窓を使ったシーンを使いたいなと思って、ARATAくんが天窓を見上げたりするシーンを考えたんですね。で、月の光があそこからさしてくるといいなと思ったんですけど、撮影は冬だったんで、あの位置には月は通らないんですよ。じゃあイミテーションで作ろうと。どうせ作るんだったらイミテーションであることもばらそうと思って。

ただ一番根っこのところにあった考え方はまさにそういうことで、記憶っていうものと重ね合せてみたいなというのがあったんで、そういう形にしました。




女性 : 海外の映画祭とかで、日本人とは違った質問とか感想はありますか?


是枝 :
海外で一番多いのはね、「誰が役者で誰が一般の人なのか」っていう質問。(客席爆笑)「あの人が話してるのはほんとの話なのか、作った話なのか」とかね。そういうところをかなり訊かれるのと…

イタリアのトリノって映画祭で上映したときに、カトリックの人達がいっぱいいたので、記者会見のときに記者の人達がこう並んでて質問を始めたんだけど…ここ(映画の中の施設)のシステムについてね…それで30分くらい話してたりとか。
なぜ7日間なのかとか、あのビデオテープはどういう仕組みで撮ってるのかとか…(爆笑)一応「あれは半分冗談なんです、1年365日テープって言って365日録画されるんです」って言って…そうするとみんないっせいに真剣な顔してメモとるんで、困っちゃったんですけど…

「悪いことをした人もみんなあそこに行くのか」「悪いことした人間は別にいくとこがあるんじゃないか」って、キリスト教の国ではよくそんな質問を受けましたね。




男性 :
いろんなところであのマークが印象的に使われてたんですが、あのマークは何かを表してるんでしょうか?


是枝 : 何に見えました?


男性 : メビウスの輪とか…輪廻転生みたいな。でも輪廻がどうこうっていう映画でもないと思うんで、やっぱり安らぎみたいなものとか…。


是枝 : これね、必ず受ける質問なんですよ、海外で。で、必ずね、「何に見えましたか?」って訊くようにしてるんですよ。うん。
輪廻転生っていう意見もありますし、天使の輪とかね。雲とか、天使の羽とか。メビウスの輪っていうのもあったかな…。
いろんな意味をこめて、というか、いろんなふうに見えてほしいと思って作ったマークなので。あんまり「あれはああいう意味で、こう見てください」っていうものじゃないじゃないですか、マークって。だから見る人がいろんな意味に見てくれればな、と思って、質問するだけにしているので、どうぞ皆さんイメージしてください。




是枝 :
時間が来たようなので終わりたいと思います。ほんとに今日はたくさん来ていただいてありがとうございました。
6月にもまた何度か、こういう形でティーチインをやっていくことになると思います。よろしかったらまた足を運んでください。

どうも本日はありがとうございました。
 
         
         

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