ワンダフルライフ
解説
『幻の光』 でヴェネチア映画祭 金のオゼッラ賞をはじめ数々の賞を受賞した是枝裕和監督の第2作 『ワンダフルライフ』 は、人が死んでから天国へたどりつくまでの7日間というファンタジックな設定の中で、"人にとって思い出とは何か?"という普遍的なテーマを描いた作品です。

死者役として一般の人々が多数登場しているのも大きな見どころの一つ。映画制作の準備を本格的にスタートさせた97年の夏からクランクイン直前までの6ヶ月、スタッフがそれぞれビデオカメラを持ち、老人ホームやとげぬき地蔵、オフィス街の公園、大学のキャンパスなど、様々な場所を訪れ、「ひとつだけ思い出を選ぶとしたら…?」というインタビューを行いました。集めた"思い出" は500。その中から選ばれた10人が本人として映画に登場し、実際の思い出を語っています。

「映画の前半、思い出を語るシーンには、台詞を語る役者、実体験を話す役者、実体験を話す一般の人など、様々なインタビューが入り混じっています。そして一般の人が語る実話にも、本人の演出や脚色、思い違いがまぎれ込んでいます。そういった記憶の虚と実の間で揺れ動く人の感情を、ドキュメンタリーとして撮りたいと思いました。」と是枝監督は話しています。

全米200館で公開され、日本のインディペンデント映画としては異例のヒットとなった本作は、ハリウッド(20世紀FOX)でのリメイクが決定しています。

サン・セバスチャン映画祭 国際映画批評家連盟賞
トリノ映画祭 最優秀脚本賞
ナント三大陸映画祭 グランプリ
ブエノスアイレス映画祭グランプリ・最優秀脚本賞

物語
月曜日。
霧に包まれた古い建物に人々が吸い込まれていく。全部で22人。彼らは面接室に案内され、そこで待ち受けていた職員にこう言われる。 「あなたは昨日、お亡くなりになりました。ここにいる間にあなたの人生を振り返って大切な思い出をひとつだけ選んで下さい。」 彼らはこの施設で天国へ行くまでの7日間を過ごすことになっているのだ。選ばれた思い出は職員たちの手で撮影され、最終日には上映会が開かれるという。

火曜日。
職員の望月(ARATA)、川嶋(寺島進)、杉江(内藤剛志)、しおり(小田エリカ)たちは死者から思い出を聞きだし、撮影のための準備を進めていく。それが彼らのここでの仕事だ。職員に誘導されながら、死者は次々と大切な思い出を選択していく。望月が担当する死者の一人、渡辺(内藤武敏)は70歳。なかなか思い出を選べずに困っている。「どうせなら・・・自分が生きた証がわかるような出来事を選びたい・・・」

水曜日。
渡辺の目の前に、彼の人生を録画した70本のビデオテープが並べられた。参考にと、望月が用意したのだ。学生時代、就職、結婚・・・「それなりに幸せだった」と語っていた渡辺だったが、次々に映し出されていく余りに平々凡々とした自分の姿に、次第に幻滅を深めていく。「こんなはずじゃなかった・・・」望月は、そのモニターに映し出された渡辺の妻、京子の姿に一瞬眼を奪われる。「幸せな結婚でしたか・・・?」「ええ・・・まあ平凡な」望月と渡辺のそんなやりとりを耳にしながら、しおりは望月の表情の変化に気付いていた。 この夜を境に、望月、しおり、渡辺、それぞれの感情は大きく揺れ動き始めるのだった。


カメラマンや美術スタッフと、撮影のための会議が開かれる木曜日。

スタジオに組まれたセットで、思い出の撮影が始まる金曜日。

そして職員たちの演奏に見送られ、試写会が開かれる土曜日。
望月にとって、今までとは少し違う7日間がそれでもようやく終わろうとしていた-。
キャスト&スタッフ
監督・脚本・編集       是枝裕和
 
キャスト       ARATA ・ 小田エリカ
寺島進 ・ 内藤剛志
谷啓 ・ 由利徹
原ひさ子 ・ 白川和子 ・ 横山あきお
吉野紗香 ・ 伊勢谷友介
志賀廣太郎 ・ 石堂夏央
阿部サダヲ ・ 山口美也子
平岩友美 ・ 木村多江
香川京子(特別出演)
内藤武敏
一般の方々
 
撮影       山崎 裕
照明 佐藤 譲
録音 滝澤 修
美術 磯見 俊裕 ・ 郡司 英雄
音楽 笠松 泰洋
スチール・撮影 (再現) 鋤田 正義
照明(再現) 中村 茂樹
ポストプロダクション
スーパーバイザー
掛須 秀一
音響効果 柴崎 憲治
スタイリスト 山本 康一郎
広告美術 葛西 薫
プロデューサー 佐藤 志保
秋枝 正幸
企画 安田 匡裕
ゼネラルプロデューサー 重延 浩
 
製作・配給       テレビマンユニオン
エンジンフイルム
製作協力 イマジカ

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