ワンダフルライフ ティーチイン
 
AFTERLIFEの五人
 

男性 : 去年の暮れに「ベルベット・ゴールドマイン」を観たときに、予告を初めてここで観てから、僕はずっと人生で一つだけ選ぶとしたら、とずっと考えてたんですけど…自分にとって。でもやっぱりなかなか決められない。 で、今日自分は二回目なんですけれども、それでも決められない。
この映画を作って監督は、自分の人生の中でいったい何を選んだのかなと(客席笑)訊きたいんですけど。


是枝 : 必ず訊かれる質問なんですけど、ARATAくんと同じようにですね、僕もずるいんですが、自分で作っといてなんなんですけど、今映画を作ってるのがとても楽しくてですね、また映画をやりたいなぁと。
今回撮影の現場が、すごくスタッフもキャストも、役者さんも一般のおじいちゃんおばあちゃん達も含めて、すごく楽しい時間を過ごせたんですよね。だから、映画を作り続けていきたいなと今思ってるもんですから、今本当に急に亡くなってこういう場所へ行ったら、谷啓さんなり、寺島さん内藤さん伊勢谷くん、エリカ達と、映画を作りながらもう少し監督としての技術を磨きます、というふうに、本当に思っています。


男性 :
あと、監督はドキュメンタリーをずっとやってらっしゃって、何本か観させていただいたんですけれども、監督が作るドキュメンタリーは、ノンフィクションがフィクションのようである。で、監督が作るフィクション、劇映画が、ドキュメンタリーっぽい。ノンフィクションである。それはいったいどうしてなのか。監督は何を考えて作ってるか。(客席笑)


是枝 :
何を考えて作ってるか。


男性 :
つまりあの、フィクションとノンフィクションがあって、どうして監督はフィクションのほうに足を向けているのか、今現在。
ノンフィクションをずっとやらないで、劇映画を作りたいと思ってるのは、その物語性に惹かれるんでしょうか。


是枝 :
物語性に惹かれてるわけではね、たぶんない…と思うんだけども。

いつもね、ドキュメンタリーをやってる時もそうなんですけど、ドキュメンタリーっていう方法論とフィクションっていう方法論の間にあるようなものを作りたいなと思っててね。それで、どうもその辺の、ドキュメンタリーやるとフィクションぽいものになって、フィクションをやるとドキュメンタリーに近いような要素を持ち込むっていうような、境界線上にあるものを作りたいという欲求がどうしようもなくあるみたいなんですよね。
その辺を探りながら、ドキュメンタリーってじゃあなんなんだろうとか、フィクションっていうのはドキュメンタリーとどう違うんだろうっていうのを、自分なりにまだ模索をしているところのようなんですよ。
だからなぜそこへ自分の興味が向くのかっていうのは、自分でも今撮りながら「なんでなんだろうなぁ」って思ってるんですよね。

さっきの「なんで全部一般の人でやらなかったんですか」っていう質問もそうなんですけど、「なんでなんだろうなぁ」って、答えながら自分でもよくわかってなくて、それはまあ、これからどういうものを作っていくかっていうところでね、自分なりに答を見つけたいなと思ってるんですけど。
…なかなか鋭い指摘でした。




男性 : 監督に質問なんですけれども、監督はマフマルバフっていうイラン人の監督が撮った「りんご」っていう映画をご覧になりましたか?


是枝 : はい、観ました。


男性 : 「りんご」っていう映画も、今日観た「ワンダフルライフ」も、同じじゃないんですけれども、ドキュメンタリーの部分とフィクションの部分を持ってて、わりと物語性を持たせて、真実っていうか、その一面を描き出そうとしている映画のような気がするんですけど…


是枝 : なるべく「ワンダフルライフ」に限った話の方がありがたいなと思ってて(客席笑)。

もちろん自分がドキュメンタリーのようなフィクションのような映画を作る、そのあたりに自分が作りたいものがあるっていうのは…今どうしても、日本の中でもそうだし、外でもそうなんですけどね、イランのキアロスタミとかに代表されるように、単純にというか純粋に、シナリオがあって役者さんが演じて、それを撮ってくっていう形の映画ではない、いろんな現実のものが映画の中に入りこんでたりっていうような形でね、境界線が曖昧になっているような映画はたくさん作られていて…。
で、そういうものに自分なりにすごく興味があって、そういう形で触発されたりしたことがね、自分がものを作っていくときに、けっこう大きな要因になってたりもするんですけれども。

個々の作品の中にはとても面白いなと思うものもあるし、あんまり好きじゃないなと思うものももちろんあるんで…「りんご」は実はあんまり好きではなかったんですけど、話し出すと長くなるので、またゆっくり話しましょう。
あの、一般の人というか、当事者の出し方の問題なんですけど、あんまり…僕は観ていて気持ちよくなかったところがあったので、えー…あんまり好きな作品ではないんです。


男性 :
今日僕は「ワンダフルライフ」を観て、とても気に入ったんですけど、もしよろしかったら、監督が次回作について考えてることがあったら教えてください。


是枝 : 具体的にはいくつかアイディアはあるんだけども、今考えてるのは、僕も今回初めてあまり脚本とかを固めずに、現場で役者さんとかね、スタッフと一緒にものを作っていくという作業が楽しくできたので、次もなるべくそういう形で、あんまり劇映画っぽくないものをまたやってみようかなというふうに思ってるんですけど。
方法論は固まってるんですけど、まだ題材をちょっと絞り切れてないっていう状況なんだけど。
ただあまり間隔を空けずに三作目の準備に入ろうとは思ってます。




女性 : あのマークにはどういう意味があるんでしょうか?


是枝 : いろんな意味をこめたので、観た人に、あのマークの持っている意味みたいなものを、半分遊びでいろいろ考えてもらえればいいなと思ってるんで、僕はこんなふうに考えてっていうことはそんなにたいしたい意味はないんですよね。
マークって最初に考えた意味っていうのはどんどん離れていった方が面白いんで、みなさんが好きにあのマークに思いを重ねていっていただければと思っております。で、今は答えないようにしています。すいません。




女性 : 映画の中でもしゃべってる…出てきたことなんですけど、小さい頃の記憶っていうのはだいたい四才ぐらいまでって言ってたんですけど、みなさんはどれくらいまでの記憶が遡れますか。


ARATA :
僕は中で言ってる雪の記憶っていうのはほんとの話で。


女性 :
静かだったっていうのも現実?


ARATA :
そうですそうです。はい。


エリカ :
何才からとかっていうのはわかんないんですけど、いつもお母さんと一緒だったから、たぶん小さい子供でしょう?二才…か…三才からにしよう。


是枝 :
あそこでスタッフが話してる話っっていうのは、みんな自分のお話なんです。だから台本があるわけではなくて、台本には「それぞれが自分の一番古い記憶についてしゃべる」っていうふうに書いてあるだけで。そこで自由に喋ってもらったのをカメラ二台で撮って、編集したんですけど。


女性 :
監督さんの一番古い記憶っていうのは…


是枝 :
ぼくはたくさん一番古い記憶があって、けっこう自分作っちゃってるもんですから、その記憶の中に自分のうしろ姿が映ってたりするんですよね。てことはたぶんほんとじゃない(客席笑)と思うんですけど。


女性 :
わかりました。ありがとうございます。
 
         
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