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5月26日・シネマライズ
5月26日 最終回上映終了後、シネマライズにおいて第6回目となるティーチ・インが催されました。 おいでになれなかった方のために、このサイト上に採録します。
(一部録音不明瞭だったため、大意を編集している部分があります。予めご了承下さい。)
是枝 : こんばんは、是枝です。
本当は内藤さんも参加される予定だったんですが、ドラマの収録が押しちゃいまして、申し訳ないんですが今日は一人でやらせていただきます。すみません。
この映画のティーチインというのをさせてもらうのが、今回で6回目になります。
海外の映画祭で上映したあとに、こういう形で時間をとって、話を聞いたり、質問を受けたりして…その時間がとっても楽しくて、ずっと海外を半年かけて廻ってきました。で、なんとか日本でもやりたいなと思って、劇場の方にお願いしてこういった時間をもっています。
ご意見ご感想ご質問等を手を揚げて話してください、よろしくお願いします。
では時間も短いので、さっそく始めたいと思います。
女性 : 今回で見るのは二回目です。
見ながらずっと考えてたんですが、やっぱりひとつの思い出というのは選べなかったんです。なんで選べないのかなと思って。
映画の中で伊勢谷さんが、ひとつの思い出だけの中で生きていくのは苦痛だと言ってたけど、わたしはそれも苦痛かもしれないけど、一個だけ選んで、あとの思い出は忘れなくちゃいけないっていうのが辛いなと思って。で、やっぱりそしたら職員かなって思ったんです。
監督も前に、選べないって言ってたと思うんですけど、どうして選ばなくちゃいけないんだろうと思って。
是枝 : うん。…難しい質問だねいきなり。
あのー…そうですね、ひとつを選んでくださいっていう設定で映画がスタートしてるんで、僕が「僕だったら選べない」って言っちゃったらすごく無責任なんですけど。でも、選ばないってことも許されてる、けっこういい加減な施設なんですよね。そのあたりが自分では好きなんですけど。
僕が言いたかったのは、ひとつ選ぶという前提にたったときに人がどんなふうに自分の人生を振り返るかっていう、その「振り返り」っていう作業にスポットを当てたかったんです。で、はっきりいっちゃうと、選ぶか選ばないかっていうのは、それほど僕の中では重要なことだという意識はなくて、どういうふうに人は自分の何十年かを振り返って、今日とか明日とかに振り返りながら考えたことを活かしていくか、という。そういう感情とか考えっていうのが自分では大事なことだったんですね。
で、特に最後に一人になった女の子が、あの後あの施設でどういうふうに生きていくか−まあ死んでるんですけど−っていうところへ、観た人が気持ちを向けていってくれるといいなぁと思って撮った映画なんで。
…答になってないですね、すみません。
女性 : あの映画の中で、泣く人が出てこないんですが、それはどうしてですか?
是枝 : …泣かないというのは初めから決めてました。カタルシスとして泣いてしまうというのが嫌だったんで。映画の中である感情が盛り上がって完結してしまうと、うーん…映画が映画で留まってしまうんで…なんとかそれを、終わったあとにこっち側(観客側)に返していきたくて。自分の方に引き寄せてみて、できれば劇場を出たあとに自分の問題として考えてくれるといいなって思っていたので、登場人物が泣いて,それに共感して気持ちよくお客さんも泣いてっていう形ではない感情の残し方をしたかったんです。
男性 : 内藤さんがいたら内藤さんにも訊こうと思ってたんですけど、監督が撮影されてる中で、内藤さんをはじめとする出演者の方に「いちばん大切な思い出」を訊いたと思うんですけど…(監督の表情を見て)あれ、訊いてませんか?
「訊いたとしたら、それはなんでしたか」って訊こうと思ったんですが。
是枝 : 直接的に「内藤さんだったら何を選びますか?」っていう訊き方はしてないんです。してないんだけど、内藤さんとか寺島さんとかって、かなり日頃からお付き合いがある人達なんですね。一緒にご飯食べにいったり、映画観にいったりという時間を過ごしている人達で。だから実際の人をベースにキャラクターを作った部分があるんです。
で、内藤さんがああいう施設に行ったとしたら遊ぶと思うんだよね、きっとああいうシチュエーションの中で。それであんなキャラクターを作ってみたんですが。
寺島さんが残るとしたら、ああいう理由で残るかなっていう…そういう、僕の思い込みですけど。
今度本人にあったら訊いてみます。
女性 : 伊勢谷さんが未来の夢の話をしたときに、未来は選べないってことだったんですけど、どうしてだめなんですか?
是枝
: 確かに、過去から選べって言われるんだけど…
僕は未来の夢でもいいと思います。夢っていうのにはその人が反映されるんだと思うので、それを含めてその人だろうというふうに思っているんですよ。なので、そのへんはあんまりこう、厳しい詮索をしない施設なんです。(客席爆笑)だから夢でもかまわないと思うし,あそこで一般の人が語っている思い出の中にも、本当にあったことだけじゃなくて、いろんな夢とか虚構が含まれていると思う、僕は知らないけど。担当者にもよると思いますけど。
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