昨日高崎映画祭に参加して来ました。国内外に沢山ある映画祭の"しめくくり"の映画祭です。
『幻の光』という映画でデビューした当時から、15年に渡ってずっと僕の作る映画を支持し、応援してくれている、とても有り難い映画祭です。
ただ、評価してくれるから嬉しくて参加しているわけではないですよ。一度でも参加するとわかりますが、とてもアットホームな、手作り感のある映画祭なんです。それは表彰状の受賞理由のコメントひとつとっても明らかです。
そして、その中心にいつもいたディレクターの茂木正男さんが昨年11月、61歳という若さで亡くなりました。映画が大好きな人でした。そして、もしかすると、映画以上に映画について語り合うことが好きだったのではないかと思えるほど楽しそうに、映画について話す人でした。
茂木さんのような人が、日本の各県にひとりずついたら、きっと「文化としての映画」を巡る環境は、こんなにもひどいことにはなっていなかったろうに、と正直思います。
最後にお会いしたのは昨年の9月。『歩いても 歩いても』の高崎シネマテークでの上映の時でした。
高崎を訪れた時はいつも茂木さん本人が満面の笑顔で駅のホームで出迎えてくれ、駅のホームで見送ってくれました。
この時もそうでした。
「3度目のガン転移が見付かったので、もうひと頑張りして、闘ってきます」と、強い決意を語ってくれたのが最後の会話になりました。ホームで握った手がとても冷たかったのを覚えています。
今回は茂木さんはいませんでしたが、映画祭は以前と変わらず暖かく、集まった監督や役者さん(欠席者ゼロ!)と楽しい時間を過ごすことが出来ました。そんなステキな会話に加われなくて、今頃茂木さんは天国でさぞ悔しがっていることでしょう。
東京から新幹線で1時間弱という旅も、祭りを楽しむには絶妙な距離だなぁと改めて思った次第です。
映画祭はまだ始まったばかり。スタッフのみなさん、お疲れさま。頑張って。そして、これからもよろしく。
是枝裕和